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三重県四日市にある、子どもの本の店「メリーゴーランド」。
1976年開業に開業した、子どもの本専門店の草分けといえる存在だ。
ここで月1〜2回、年間15回のスケジュールで、絵本作家を目指す人のための私塾が開かれている。
今年で16年目を迎えるこのメリーゴーランド絵本塾は、店主の増田喜昭さんが『絵本のトキワ荘』を目指してはじめたものだ。

20090628_02 絵本の専門家として知られ、新聞やラジオ、雑誌などで絵本の紹介をしたり、各地で講演なども行う増田さん。専門学校で12年ほど創作絵本コースの講師もしていたのだが、卒業後も絵本作家をめざす生徒が多いのをみて、もっと絵本そのものと真剣に向き合う場をつくりたいと、知り合いの編集者などに声をかけ、この塾を開く決意をしたのだという。
プロになる上で最も重要なのは、その絵本が売れるかどうかだ。
だが、絵本塾ではそのために必要なことを教えるわけではない。
  塾生一人一人がそれぞれが作ってきた絵本を回し読み、互いに意見をぶつけ合って切磋琢磨していくのだ。
そこではプロの編集者である講師の意見も、こうしろというものではなく、あくまでアドバイスなのだという。
「ラフでもなんでも作品を作り、この塾に参加した時点で、もう作家です。だからこそ、そのアドバイスを聞くかどうかは、本人が判断していくことなんです」
『プロ意識を持つこと』。それが増田さんの方針だ。
それだけに、この塾への入塾はその条件も厳しい。
自作の絵本を作り、オーディションを突破することが、入塾の条件となっている。
それでも応募は全国からあり、今の塾生にも四国や関西の遠方から来ている人もいる。
そんな中でこれまで絵本作家としてデビューできたのは13人で、専業の絵本作家も5人。
その他の塾生も画家や編集デザイナーなどの創作に携わっている人も多いという。
「ただ絵が上手いだけでもダメ。プロのイラストレーターの人でも落ちます。ユニークで斬新な発想を持った、一年間楽しくつきあえるような人にこそ来てもらいたい」
と増田さんは言う。
このように、増田さんの考え方は絵本に対して実に真剣だ。
「絵本はただ子どもの保育や教育のための物だけでなく、もっと色々な可能性を秘めている。映画を撮るといった表現の方法と同じように、絵本でしか表現できない物もある。絵だけじゃなく、写真の絵本だってあり。絵本という媒体を使って、色々なチャレンジをして、作る面白さを知って欲しい」
さまざまな絵本を見てきた増田さんだからこそ、絵本を作るだけでなく、そこにある絵本の可能性を切り開きたい。そんな想いが、この絵本塾には込められているのである。

メリーゴーランド絵本塾
〒510−0836
三重県四日市市松本3−9−6
電話:059−351−8156
FAX:059−351−3472
HP:http://www.merry-go-round.co.jp

(Written by 青山鉄平)