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速さを誇る、利便性の高い移動手段の新幹線。ツールとしての利用だけではなく、たとえ「新幹線マニア」でなくても、その新幹線の「顔」が気になったことはないだろうか。

新幹線の先端部分。窓やライトのついているその部分は、しばしば「新幹線の顔」と称される。近頃は、人の顔の雰囲気を称する呼び名としても、「しょうゆ顔」「ソース顔」のように「新幹線顔」を使用することもあるくらい、人々には定着しているようなのである。

新幹線の顔は、速度をあげたり、空気抵抗などへの配慮から、様々な試行錯誤を経て改良され続けている。山口県下松市にある山下製造所では、その新幹線の雰囲気を決めるであろう新幹線の先端、いわゆる「オデコ部分」を製造している。微妙な曲線を「打ち出し技術」でもって作り出すこの製造所は、国内外から高い評価を得ており、ものつくり日本大賞・特別賞を受賞した経験もあるほどだ。

山下製造所は、パッと見ると、よくある町の工場。しかしながら、その内部では高い技術を持った職人たちが「明日の最新鋭」を作り続けている。打ち出しという技術は、平面のアルミ合金板を、ハンマーを使い湾曲させていくという技術だ。新幹線の先端部分はこの技術を駆使し、パーツごとに分割させて打ち出したアルミ板を溶接して繋ぎ合わせて出来ている。

つまり、新幹線の先端部分。そこは、職人の手作業でもってコツコツと作られているのだ。

鼻先が単純に丸いものから、カモノハシのくちばしのように複雑な形状をしたものまで、この製造所では手作業で作り出してきた。経験と努力を積んだ職人のみが成せる業だ。

下松市はそもそも日立製作所笠戸事業所があるということもあり、新幹線製造の街として有名だ。その中でもこの山下製造所は、熟練した技術とその職人魂がマスメディアなどにも取り上げられ、そしてものつくり大賞の特別賞を受賞したことで注目を集めた。

山下製造所は現在、その匠の技をより身近に感じてもらおうと、アルミ製のチェロやヴァイオリンの製造にも力を入れている。改良を重ねているそれらの弦楽器は、銀色に輝く「技術の美」を感じさせる一品だ。常日頃の展示は行っていないが、時折講演会などで展示されることがあるとのこと。

日本人の誇りともいっていいような彼らの巧みの技術。「ハイテクを支える手作業」という存在の大きさを、改めて思い知れるのではないだろうか。

山下工業所
http://www.yamashita-kogyosho.com/

(Written by 澁澤すい)