そんな中で、子供達に絵本の読み聞かせを行っているのが、京都府に住む諸岡弘さんだ。

元々は、本の取次会社のトーハンに勤務していた諸岡さんだが、人生のターニングポイントになったのは、そこで子供のブックフェアの企画を担当したことだという。
そこで見た読み聞かせを聞く子供達の姿を来かっけに、子供の本、とりわけ絵本に興味を持ち、55歳で定年を待たずに早期退社し、読み聞かせをはじめたのだ。
「でも、子供のためにというよりは、自分の生き甲斐のためにはじめたんですわ」
諸岡さんはそう言って笑う。
なによりもまず、自分が楽しむ。子供達に声を出して本を読むのが楽しいのだという。
「自分が楽しい、面白いと思った絵本を読んで、子供達も楽しんでくれたら最高ですやん」
だが相手は子供、そう簡単な物ではない。
つまらないと思えばすぐに反応に出る。聞いていても露骨に顔に出るし、酷いときには他のことをはじめてしまう。だが、それでいいと諸岡さんは言う。
「誰もが同じことを考えるわけでもないし、感じ方は人それぞれ。今の、楽しむ物が他にもいっぱいある時代の中で、本に興味を持ってくれる子供が増えてくれればいいと思う。絵本を読み聞かせるのは即効性はないですからね。塾みたいに勉強が出来るようになるわけでもないし、サッカーや野球のチームみたいにスポーツが上手くなるわけでもない。でも、小さい子供の内から本を読んでもらい、お話に触れるというのは、その後、大きくなってから活字や物語を楽しむ事が出来る基盤となる。そんな風に、本を楽しめる子供が増えて欲しいんですわ」
諸岡さんは読み聞かせの中で、物語の楽しさ、素晴らしさを知ってもらいたいという。
諸岡さんの地道な活動が話題を呼び、最近では、さらに、絵本の選び方を教える側として講演の機会が多くなってきた。
その中で、諸岡さんは大人が絵本と付き合っていく事についても色々と考えたという。
「今は大人が楽しめる絵本も増えているし、絵本は女性や子供だけの物という先入観を捨てて、色々な人に触れて欲しい。たとえば子供に読み聞かせ本を選ぶのも、男性の感性ならまた違った本が選ばれる。それも絵本の楽しみだと思う」
今後もずっと、絵本の読み聞かせは続けていきたいという諸岡さん。
「この仕事に定年はないんで、目が見えて声が出て、身体が元気な限りは続けていきたい。色々な本を子供達と一緒に楽しんでいきたい」
自分で読み、子供達に読み聞かせ、絵本を楽しむ。それこそが、諸岡さんの生き甲斐なのだ。
問い合わせ
JRAC関西支部
京都府京都市右京区西京極堤下町18−96
電話番号 075−312−7510
※JRACとは、「JPIC(財団法人出版文化産業振興財団)読書アドバイザークラブ」のことで、「JPIC読書アドバイザー養成講座」を修了生の有志の団体。
(Written by 青山鉄平)