20090714_01テレビでは温和で雑学知識が豊富。そんなデブキャラを演じている伊集院光。しかしそんなテレビのイメージのまま、ラジオの伊集院を聴いてしまうとそのギャップに驚くこと請け合いだ。本人曰く「テレビに出ているのが白伊集院でラジオは黒伊集院」だそうで、黒伊集院は20年以上も人気パーソナリティとして走り続けている。

伊集院のラジオデビューは1987年。当時落語家だった伊集院は、師匠(三遊亭楽太郎)に内緒でニッポン放送のお笑いオーディション番組に出演。オペラ歌手の肩書きで、さまざまな替え歌やお馬鹿ソングを歌い脚光を浴びる。その後オールナイトニッポンのパーソナリティに抜擢。今なお伝説として語られる架空のアイドル芳賀ゆいをはじめ斬新な企画が話題を呼び、当然ながら師匠にばれてしまい落語家の道を絶つことに。その後夜の帯番組「Oh!デカナイト」を経て1995年よりTBSラジオで「深夜の馬鹿力」のパーソナリティに。これまで深夜の雄だったオールナイトニッポンの牙城を崩し聴取率No.1の座を勝ち取った。

高レベルのはがき職人を多数輩出した多くのコーナーや、テレビでもパクられることもあった斬新な企画の人気は高いが、なんといっても伊集院の最大の魅力はフリートーク。

「生放送」……言った言葉は取り返しがつかない。そんな場所で彼は放送スレスレ(というか完全アウト)のトークを次々にする。あえて名前は伏せるが、好感度が高い女優やアーティスト、人気のある芸人やタレントでも彼にかかっちゃ笑いのターゲット。それもただ嫌いとかの悪口でなく、みんな言わなかったが心の中でひそかに思っていたことを伊集院は、まるでオブラートを破り、えぐるように毒を吐く。共演者や放送局、芸能事務所に関する毒舌も日常茶飯事で「ここまで言うか」と呆れながらも、核心につきそうでつかない脱線話のくだらなさクオリティの高さに、毒舌以上に笑いが生まれる。

TBSでは「日曜日の秘密基地」という番組も担当。2003年にはラジオ人としてはこれ以上ない名誉な「ギャラクシー賞」を受賞。しかしギャラクシー賞さえも、伊集院にしてはラジオの遊びのひとつに過ぎない。授与式前にありあえないほどの大量の水を摂取した伊集院は、正装の服装の下に紙おむつを着用。多数のマスコミ人がいる場でスピーチをしながらおしっこを垂れ流すという暴挙に(スピーチ中に手を上げたり「きてます」と語っている時はおしっこをしていた)。その模様を翌週の深夜放送でオンエアした。これと同じことをもしテレビでやってしまったら、批判が殺到しあっという間に番組は終わってしまうだろう。テレビやインターネット、映画に比べるとマイナーな世界ラジオ。それも聴取層が限られる深夜ラジオだからできる笑いを伊集院は追い続ける。

(Written by みぞてたかし)