20090929_01深夜0時の時報とともに番組ジングルが流れ、オープニングナンバーのイントロが入る。
イントロにかぶせてのDJの軽快なトーク。
イントロの尺ぴったりの曲紹介。
曲紹介を終えるとそれを待っていたかのようにヴォーカルの声が流れる。

1980年代は全国各地で次々と新しいFM局が開局した時期であった。そのためか音楽はFM、トークはAMという区分付けをされることが多くなる。
そんな中、バリバリの音楽番組として80年代後半のTBSラジオの深夜0時を支えたのが「SURF&SNOW」。
マイクの前にいるのは、スーパーDJ松宮一彦である。
約60分の番組は、J-POP中心の音楽プログラム。
松宮を含む5人のディレクターが月〜金と各曜日の選曲を担当する。新曲や話題曲もあれば懐かしい曲、はたまたまだCDにもなっていない無名のアーティストの曲を流すことも。
松宮はイントロにかぶせて最低限の時間だけを喋り、アーティストの情報を伝える。
当時は着うたもない時代。
好きな曲をラジオから録音する人が多かったため、FM曲ではDJの言葉をかぶせず、イントロからフルコーラスでオンエアするケースが多かった。
そのため番組には「イントロで喋るな」、「録音させろ」といった苦情のメッセージも寄せられたそうだが、松宮は「ラジオの音楽番組はプロモーションの場」、「フルコーラス聴きたいなら録音せずCDを買え」と頑固にイントロのナレーションにこだわり続ける。
番組では無名時代の久保田利伸やKANなどをいち早く紹介するなど、自称「日本の音楽業界最後の良心」の松宮だけあって、新進アーティストを数多く発掘してきた。
深夜0時からの放送なので、その日にコンサートを見てからスタジオに入ることも多く、サザンオールスターズや山下達郎といった大物アーティストのコンサート初日のレポートを「今夜見てきました」と最速で伝えてくれるなど、音楽ファンにとってたまらない番組構成だった。

コンサートといえば松宮は、「バラードの手拍子をやめよう」と番組で訴え「手拍子やめようバッジ」も番組で制作。希望者にはリスナー全員に郵送してくれた。私も松宮さんに見習いバラードでは絶対手拍子をしないのだが、今でもコンサートやライブで「パン・パ・パン」とバラード時に叩かれる手拍子を聴くと不快になり、そして松宮さんのラジオを思い出す。

SURF&SNOWは、1985年秋にTBSラジオでスタート。1996年秋に終了し、その後1998年秋NACK5で復活した。聴取率も1位になるなど番組の今後が期待されたが、松宮自身のスキャンダルが原因で番組は打ち切り。そしてその半年後、自らの命を絶ち帰らぬ人となってしまった。

あれから10年。インターネットや着うたの普及。インディーズレーベルの乱立と、20世紀とは比べられないほど日本の音楽界は激変している。
日本の音楽を本当に愛していたスーパーDJ松宮がもし生きていれば、今の音楽界についてどう思うのだろうか?絶対無理だけど聴いてみたい。

(written by みぞてたかし)

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