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国内、海外問わず、地域によって様々な特色を持つ祭事がある。その地域に住む人々にとっては馴染み深いものであっても、他から見れば、驚くような祭りや神事も数多くある。
その中の1つをご紹介しよう。

宮古島北部にある島尻の集落には、奇妙な格好をした3匹の神様が、人々、家、車に泥を塗りまくる『パーントゥ・プナハ』という伝統行事がある。その泥も、ただの泥ではない、1年間じっくり寝かせた臭い臭い泥なのだ。どの位臭いかといえば、その泥がついた服は2度と着られないほど・・・というのだから、驚きだ。
「パーントゥ」とは‘お化け‘や‘鬼神‘という意味で、「プナハ」とは年に3回ある行事。旧暦の9月(10月)に行われ、3回の「プナハ」のうち1回(1日)は、準備や前夜祭、残りの2回(2日)は、神様が泥を塗る伝統行事となる。
もともとの由来は、数百年前に、島尻の西海岸(クバマ)にクバの葉に包まれた赤黒い仮面が漂着したこと。これを世持神の来訪として、仮面神祭祀が始まったといわれている。仮面をつけた神様が泥を塗ることによって悪霊や災いを払い、幸せをもたらすという意味が込められているそうだ。

『パーントゥ・プナハ』当日は、17時ちょうどになると、集落のはずれにある神聖なンマリガー(生まれ井戸)から、つる草をまとい、泥を塗りたくった3匹のパーントゥが現れる。仮面をよくよく見てみると、少しずつ顔の作りが違うことがわかる。3匹はそれぞれ、親(んま)、中(なか)子供(っふぁ)であり、親は、威圧感が、子供は、なんとなくユーモラスな表情をしているのだとか。
現れたパーントゥは、まず、3匹一緒に集落内を一周し、各所で行われている屋外宴会に乱入。その後、1匹ずつに分かれて、鬼ごっこを開始する。逃げまどう島の人々―。子供も大人も、タクシーも、バスも、警察も、観光客も、パーントゥによって容赦なく泥を塗られる。また新築の家も、家庭繁盛の祈願として壁や畳に、たっぷりと塗られてしまう。集落に1軒しかない売店も、もちろん泥だらけだ。
20時まで続けられるこの暗い中での鬼ごっこは、怖くもあるが、大人も子供も一緒になって声をあげて無邪気に逃げ回ったり、泥を塗られた顔や体を互いに見合ったりしているうちに、笑いが溢れ、誰もが笑顔になり、集落全体が明るい雰囲気に包まれるのだそう。

現在、パーントゥは、青年会の組織の方々が、担当しているが、もともとは、島尻の長(おさ)によって、選ばれし者が任されていた。それは『パーントゥ・プナハ』には、神聖な行事として深い意味が込められているからだ。
メディアなどを通して、この伝統行事を知り、軽い気持ちで足を運ぶ観光客も増えているが、140世帯ほどの、小さな島尻の地域の人々にとっては、たんなるイベントではない。厄を払い、無病息災を願う‘‘神聖な伝統行事‘‘として保ち、守り、続いてゆくことを強く願っている。大切な大切な祭事なのだ。
そのことを私達は忘れてはならない。

1993年に『パーントゥ・プナハ』は国の重要無形民族文化財として指定されている。

(Written by 石川陽那)

(画像提供:日本トランスオーシャン航空株式会社
「美ら島物語」 http://www.churashima.net/

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